おしげ
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「あー 話せば長いが、あの太夫さんは、もとを正せば堺の油屋で有徳のお人、米の相場で家財を傾け、今はこの長屋で独り侘び住まいじゃが、一人娘は、江戸の日本橋音羽町の小間物屋へ嫁に行き、跡取りのお子も一人設けて、何不自由なく暮らしてじゃわいな。」
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おたか
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「はあ。そこまではわしも誰ぞに聞いてじゃ。」
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おしげ
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「ここからがえらいことじゃが、今年の春先、娘さんは、子供をおんばさんに預けて、ご亭主の小間物屋五兵衛さんと連れ立って、お舅様方の墓参りかたがた長崎へ商いに出かけなさったが、そのまま二人共行方知れずじゃ。 」」
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おたか
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「まあ、むごいことじゃ。」
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おしげ
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「長門の瀬戸で船諸共渦にのまれたか、それともどこぞの山中で山賊にでも出会うたか、文の便りもないままに、奉公人だけでは半季の買いがかりの算用がすまず、お店は人手に渡り、残されたお子はたちまち親も家もないお子になってしもうてじゃ。それでもおんばさんは、裏長屋の侘び住まいして、仕立て物なぞ細々とそのお子を大事にお二人の帰りを待ち侘びていたそうじゃが、待てど暮らせどお帰りはなく、そのうち無理がたたって体を壊し、とうとう先月どっと病の床じゃ。」
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